舛田 剛さんの「砂漠植物の作家鉢」
唐津焼で塊根植物の鉢ができないだろうか――
佐賀県CSO推進機構 地場産品ブランディング支援部門の企画部長から話を持ち掛けられた時、脳裏に浮かんだのは舛田さんの作品だった。
どうやら企画部長も舛田さんのイメージだったらしい。
一楽二萩三唐津――言わずもがな茶人に好まれた茶陶を指す表現だ。
唐津は日常の器としての顔も、この茶器としての顔も持つ。
何せ唐津は「引き立てる」のだ。
いつも酔いを心地よくしてくれている酒器に一輪、花を挿す。すると驚くくらい素直に花器になる。
舛田さんの作品群は特に、こういった使い手の我儘をすんなり受け止めてくれる雰囲気を持っている。
しかしながら、水捌けが重要な塊根植物や竜舌蘭の鉢となると底に穴を大きく開けることになる。
つまり、折角の舛田さんの作品が植木鉢以外には使えなくなる。
思いあぐねた末、それでもやはり舛田さんの作品で植物を飾ってみたい。そう思った。
特に、舛田さんの黒唐津は、きっと植物に映えるだろう。
心を決めて、舛田さんに切り出した。舛田さんは受け止めてくれた。
砂漠植物の作家鉢。
舛田さんの作品のお披露目は8月頃になるだろうか。
心待ちにしていた矢先、豪雨が九州北部を襲った。
佐賀県内で特に被害が酷かった場所に、舛田さんの窯から程近い地区の名前があった。
連絡を取る。返事があった――登り窯を覆う屋根が裏の大木に押し潰された、と。
企画部長とともに舛田さんの窯を訪ねた。
屋根は柱が土台から浮き上がってずれ込み、うち太い柱の1本は、2基ある登り窯のうちの1基にぶつかるようにして止まっていた。
屋根にせき止められた倒木は、到底人の力で動かせる様相ではなかった。
何より2基の登り窯を雨風から守ってきた屋根は最早取り除くしかなく、これもまた機械を入れなければ対応しきれないだろう状態だった。
焼造を待つばかりとなっていた舛田さんの「砂漠植物の作家鉢」。
私たちは、私たちが舛田さんのためにできることをしながら、待つことにした。
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